2016年10月24日

研修旅行 〜西原村の応急仮設住宅〜

 10月2日、3日の一泊二日で熊本-佐賀-長崎の九州3県をめぐる名古屋北支部の研修旅行に行ってきました。昨年の研修旅行の時に「次回支部旅行の行先きは九州で」との話になり、私が学生の時に熊本に住んでいたこともあって「熊本の建築めぐり」を一つの軸に今年の研修旅行を計画することに。そんな矢先に熊本で大きな地震が発生。行先を変更するかどうかという話も出たが、被災地の状況を目の当たりにして、現地で活動している方々の声を聴く機会にしようと熊本訪問を決行した。


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 熊本での主な目的地は「西原村小森仮設団地」と「益城町総合体育館避難所」。熊本行き飛行機の機体トラブルのため代替機で熊本に向かい、この時点で行程が1時間遅れた。熊本空港に到着するなり足早にバスに乗り込み、東に向かうこと10分。右手前方にたくさんの仮設住宅群が見えてきた。最初の目的地である西原村小森仮設団地だ。

 小森仮設団地では第4団地まであり(その後に第5団地[10戸]が追加)全体で300戸を超える住戸が整備されている。4団地それぞれに集会所「みんなの家」が計画され既に2棟が完成していた。私の学生時代の先輩である長野聖二さんが参加されている有志グループ「Kulos ※1」が設計に携わった「縁側のあるみんなの家」を中心に見学する予定だったが、工事費の調整や資材手配等の事情で着工が遅れ現場は木杭が施工された状態。先に完成した2棟は「くまもとアートポリス ※2」のコミッショナー+アドバイザー3名の4名連名による設計で、みんなの家の先進事例として早急に整備されたもの。それに対して残る2棟は「本格型みんなの家」という位置づけで、熊本県が発注するデザインビルド方式のプロジェクトとして進められている。デザインビルドとは設計施工一括発注のことを指し、設計者と施工者でチームを組んで計画に取り組み、住民参加の意見交換会や技術会議、金額調整交渉などをチームでまとめ上げていく方式。「従来の自己表現型建築家像ではなく、住民の思いを受け入れ、暮らし方を考え、且つどのようなライフスタイルが成り立つか試みる。構法や素材、コストをしっかりとコントロールして建築として成り立たせるのが建築家のミッションである」と、伊東豊雄コミッショナーがおしゃっている。


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 そんな理念のもと「建築家協会+Kulos」、「熊本建築士会青年部」がそれぞれ1棟ずつ設計を担当。県からのトップダウンによる指名で各団体に設計依頼があったことも特筆すべき点だ。震災後は迅速な対応が必要だが、従来的な入札や相見積による進め方では調整や決済に多くの手間・時間を要して着手が遅れてしまう。また各個人の生活や業務がままならない中で単独業者で設計業務を進めることは非常に困難である。そういった状況を踏まえて「団体」に設計依頼をするという行政の判断は、くまもとアートポリスで培ったバックボーンがある熊本だからこそ成し得たものであろう。またKulosのような有志による任意団体が設計チームに選ばれていることもアートポリスらしい事業だと感じた。


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 小森団地での仮設住宅の多くはプレファブだが一部は木造で建てられている。木造棟は応急仮設住宅の役目を終えた後も公営住宅として継続利用する計画とのこと。東日本大震災の時も木造仮設住宅が建てられたが、木杭の上に床を造る工法のため長期使用で床の傾斜などが生じているようで、今回の熊本ではコンクリート基礎を採用したりと前例を踏まえて計画されている。またプレファブ棟が並ぶエリアにおいても、住棟をずらして配置して、住棟横にはベンチを設置するなどして、団地空間が単調にならないよう工夫されている。みんなの家については前述の2棟が完成しているものの、本来のねらいである「みんなのリビング、コミュニティの場」としての日常利用は未だにされておらず、2棟とも鍵がかかった状態で誰が鍵を管理しているか分からない、といった状況のようだ。仮設住宅に入居されている方は様々な地域から集まっているため、今までの町内会やご近所ネットワークを頼りにすることができず、まずは仮設団地内でのコミュニティをどうつくっていくかが課題であると、現地の皆さんがおしゃっていた。みんなの家の日常利用を促すには、従来的な利用予約や管理側の都合による集会所運営ではなく、日中は常時開放できるようなプログラムが必要だと感じた。


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 ハードの整備と同様にソフトの整備がいかに重要で、さらにはコミュニティ形成がどれだけ大切であるか、そしてソフト・コミュニティをつくっていくには旗振り役となるキーマンの存在がとても重要であることをあらためて気づかされた西原村訪問でした。

 最後に、今回の訪問にあたり熊本の建築士の方々へのお声かけや段取りをしていただいた長野さん、集まっていただいたKulosの柿内さん、熊本建築士会青年部の玉野さん、丹伊田さん、そして話を聞かせていただいた住民の皆さまに感謝申し上げます。

名古屋北支部 秋好大樹


※1 Kulos
熊本で活動する建築に関わる任意グループ。2015年発足
以下、Kulos公式ページに記載の案内文
Kulosとは、くまもとを拠点として建築を生業とする30〜40代の者たちが集い、活動する場です。
様々な個性が合流することによる新たな発見を糧に、建築文化や人が育ち活躍できる社会をともに考え、くまもとの未来に貢献できることを目指します。
http://kulos-a.blogspot.jp/
https://www.facebook.com/Kulos.archi/?fref=ts

※2 くまもとアートポリス
「都市にデザインを、田園にアイディアを」をスローガンに、建築や都市計画を通して文化の向上を図ろうというコンセプトで1988年に始まった熊本県の事業。現建築コミッショナー(第3代)は建築家の伊東豊雄。公共建築は、競争入札により設計者を決めることが一般的だが、くまもとアートポリスでは、設計者の選定についてコミッショナーに全権が与えられるという特殊な制度を取っており、これが最大の特徴といえる。このコミッショナー制度により、著名な建築家を招いたり、また若手の建築家に公共建築に携わる機会を与える登龍門的な役割を持ったりと、日本において建築を志す者にとって、熊本県は東京・大阪などの大都市とともに、無視できない地域となっている。海外メディアでは「県全体が建築博物館である世界にも類を見ない地域」として紹介されている。
https://www.pref.kumamoto.jp/hpkiji/pub/List.aspx?c_id=3&class_set_id=1&class_id=1169
https://www.facebook.com/kumamotoartpolis/


posted by nagoyakita at 20:54| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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