2016年11月06日

研修旅行:九州3県1泊2日の旅 〜計画から実現まで〜

「今年の支部研修旅行は熊本へ行きたい。さて、宿はどこにしようか。」昨年の三養荘(村野藤吾氏設計)に引き続き、今年ももちろん名建築が良いということで、佐賀県の嬉野温泉にある旅館大正屋(吉村順三氏設計)へ宿泊することに決めました。

主な見学先の計画をしようと動き始めた矢先に熊本で大地震が発生。おそらく建物見学どころではない状況。しかし、私の中では行き先を変更する選択はまったくなく、むしろ「私たちは建築士として、被災地の状況を見に行こう。」と。

とは言うものの、日々刻々と変化する被災地の状況、半年後私たちが訪れるころには現地がどうなっているかは誰もわからず、どのような行程を立てようかしばらく頭を悩ませていました。


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折しも6月に熊本YMCA職員の大久保さん(益城町総合体育館避難所所長)とお会いする機会があり、その場で10月の避難所視察受け入れをお願いしました。さらに、被災地の仮設建築物の視察については、同じ北支部の秋好さんが、学生時代の先輩である現地の建築士、長野さんと連絡を取りあい、長野さんらが手がける仮設建築物視察と地元建築士の方々との交流の場を設けてもらうことになり、一日目の熊本の行程は決まりました。(一日目の報告については浅井支部長、秋好さんのレポートをご参照ください。)

そして、嬉野温泉から少し足を延ばすと長崎県に入るため、二日目の訪問先は長崎にしました。
午前中は平和公園周辺を見学、午後からは自由行動で市内散策をすることになりました。


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私は教会や細い路地裏や坂道の散策をしましたが、住宅の間を縫うようにして存在する路地は公道なのか私道なのか区別しがたいところがあり、歩き進んでいくうちに個人の敷地に入ってしまい慌てて引き返すこともありました。
点在する教会、急坂、路地、目の前に海の見える風景は普段生活する名古屋とは全く違い、時間が許せば一日中歩きたい程でした。


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また、今回宿泊した大正屋ではゆったりとした時間を過ごすことができました。天井高を抑えつつも広がりを感じるロビー、吉村障子と小さな桧浴槽のある客室、有田焼の器に盛り付けられた海の幸中心の料理に日本酒が進む、進む。男女それぞれ2か所ずつある浴場はそれぞれ異なる顔を持ち、入浴を楽しくしてくれます。そして何よりもこの宿はサービスと接客が素晴らしく、宴会の際、仲居さんが私たちの何気ない会話からニーズを的確にくみ取り、食事が終わるころには空いている客室が二次会用に使えるようセッティングされ(氷やグラスまでも無料で用意されていた)、さらに翌朝、宿泊客のいない特別室を何部屋か見学させていただく機会にまで恵まれ、気持ちよく宿を後にすることができました。


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しばしば「北支部の旅行はスケジュールがタイトで忙しい!」との声が聞かれるとおり、今回も強行スケジュールでしたが、一般的なツアーとは一味違う、北支部らしい活動的な旅行になったのではと思います。


名古屋北支部 研修委員会 委員長 下村明子
posted by nagoyakita at 13:51| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月03日

研修旅行2日目 〜 長崎 〜

 熊本で被災地の現況と人や組織の実態を、現地で仮設住宅や避難所の運営に携わる方々に直接話を聞き、いつか起こるであろう地元でしっかり備えていこうと意識をした初日。東北を個人で回ったときとはまったく違う生の声を聞くことができ、短いながら内容の濃い視察をさせていただいた。

 佐賀まで移動して宿にとったのは、吉村順三設計の旅館大正屋。名建築を楽しみながら美味しい食事をいただきすっきりリフレッシュできたのだが、何よりもこちらの予想を上回る数々の「おもてなし」にすっかり宿のファンになってしまった。



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 2日目の朝はバスで移動。近づくにつれ両窓から見える海と山並みにへばりつく数々の建物を見ると長崎に来たのを実感する。まずは平和公園を歩き原爆資料館へ。原爆の資料や被爆の惨状を切り取った数々の写真に胸が痛くなり、繰り返してはいけない歴史の重みを感じた。隣に建つ国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館は建築コンクールでもお世話になっている栗生明氏の設計。地上の水盤や死没者数と同じ7万個の光ファイバーによる灯り、爆心地へ結ぶガラス列柱のある地下の追悼空間のなど、追悼と平和祈念への静寂で厳格な場となっている。


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お昼は元祖ちゃんぽんの店、四海楼。長崎ちゃんぽんや皿うどんなどご当地グルメを食べることができた。
 午後からは自由行動。私たちのグループはまず今井兼次設計の二十六聖人記念館と聖フィリッポ教会を見学した。そこでちょっと足を延ばしすぐ北の西坂町を散策。急勾配の坂を歩みながら、よく家が建っているなあと感心し、道だか人の敷地だか分からないような路地をどんどん歩いていくのが楽しい。地元の方に、ここ抜けていけるよと教えてもらった道が家と家のわずかな隙間で人ひとりがようやく通れるほどだったりする。家々は力強く建ち、敷地境界といった概念がまったくなく、使えるところは皆で使ってしまえというようなその地域の逞しさを心地よく感じた。


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次の目的地へは100年の歴史を持つ路面電車で移動。レトロな外観や運転席は哀愁があってよい。グラバー園と大浦天主堂を見学し、最後に居留地を散策し長崎の旅を終える。他のグループも出島や眼鏡橋や隈研吾設計の長崎県美術館などいろいろとまわったようだ。1日ではまわり切れていないかも知れないけれど長崎のよさを十分感じることができた。


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準備から現地のツアコンまで力を注いでくださった下村さんはじめ、支部の皆さんと周れたのは糧になりとても充実した研修旅行になりました。ありがとうございました。


名古屋北支部  堀 智永
posted by nagoyakita at 16:46| Comment(0) | 報告 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする